BAIKAL
ICE MARATHON Clean Water Preservation Run

【レースレポート】神秘のバイカル湖氷上マラソン2017

2017年03月09日
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こんにちは。

トレイルランナーズ大阪の安藤大です。

「バイカル湖氷上マラソン」の様子が2017年3月8日のNHK総合で放映されたそうです。みんなチェックしてますね〜僕は日ごろテレビをほとんど観ないので知りませんでした。

「シベリアでしたか~ほっとしました。」

こんなメッセージをいただきました。僕が「日本から近くて遠い。ビザが必要な国。」と話したので、最近何かと話題の北朝鮮を想像し心配いただい方もいたようです。安心してください。今はまだその時ではありません。

それでは「MARATHON ON ICE/神秘のバイカル湖氷上マラソン」のレースリポートをお届けします。

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フィニッシュ!マラソン中に足元の氷はピキピキ音がするし、薄い氷を割らないよう、スーパーの卵パックの上を走るようになるべくいいフォームで慎重に走りました。

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バイカル湖の底には20世紀初頭にロシア軍が横断に失敗し、今も25万人の人間の魂が眠っています。その時は猛吹雪により気温は-70℃にまで下がり一瞬で気を失うほどの強烈な寒さで、人々は歩きながら次々と凍っていき死んでいったらしい。そんな湖の上を無事に人力で縦走できただけでも良かった。これが本当の薄氷の勝利?

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●2017年は32か国から200人のランナーが参加

2013年は14ヶ国150人、2015年は21ヶ国150人、年々人気の高まりがうかがえます。これが300人、500人規模まで拡大したら足元が心配。ロシア人はたった5%。ロシア人が少ないのには「モスクワからイルクーツクまで5時間。なぜ同じ国内を移動し旅行しなければならないんだ。それだけ時間があればタイへ行く」という考えになるからだそうです。

●日本人ランナーは毎年多数出場する人気

日本人ランナーは僕を含めて12人もいて驚きました。全員が日本からではなくモスクワやイルクーツクなど大企業の駐在人で恒例マラソン行事イとして毎年参加している人たちでした。日本からのフルマラソン参加者は僕だけでした。

●ハーフマラソンよりフルマラソンが人気

アドベンチャーマラソンではフルマラソンと同じぐらいハーフマラソンの人気がありますが、氷上マラソンの場合はフルマラソンが約165人でハーフマラソンは約35人と少なめ。僕の憶測ですが、ハーフは中間地点がフィニッシュでゴール後は人数が揃い次第スノーモービルで岸まで送ってもらいます。岸までは片道20分強、往復40分。もしランナーが100人もいたらそれだけ待ち時間が長くなり凍えます。主催者としてはなるべくフルマラソンの部に参加してもらって、自分の足で走ってもらいたいのでしょう。

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主催者のスタート前演説が長い!ロシア語なので何を話しているのかさっぱりわかりません。会話の途切れめがわからず「いつ始まるのだろうか?」とやきもきしていたら「3、2、1、スタート!」突然スタート。

スタートからいつもと同じペースで走っているにも関わらず心拍数が高い。緊張のためか、ガーミンの心拍センサーの動作運動範囲は−10℃までなので誤作動を起こしているのか。ガーミンを充電できる温度範囲は0℃から40℃までなので、ここロシアの氷点下では充電もうまくできないことがある。

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アナと雪の女王の世界がここに。白一色の色のない世界を一度走ってみたいと思っていました。それを臨んでわざわざグリーンランドまで行き参加した北極マラソンでは草木や山、風景があり叶わずここに来てようやく実現しました。美しい!

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まずはキロ5分のジョギングペースで様子見がこんなペースでは次々と追い抜かれていきます。レベルが高い。フルマラソン4時間半が最低体力条件ですからね。先頭の3人とはぐんぐん離れていき、おそらうキロ3分台ペース。足元の悪い雪道では自然とストライドは狭まり、ピッチでスピードコントロールするようになります。そのためみんなリズム感が良く走りの質が高い。
 
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地球温暖化の影響で暖かい。昼になると気温は5℃まで上昇。3月の平均気温は-10℃前後、最低気温は-15℃に達することも。レース当日は滞在中一番の快晴で最高気温が5℃。スタートから-5℃は僕には暑すぎました。−15℃を楽しみにしていたのに残念。−20℃より気温が下回り湿度が高いと、肺が凍りつき走るのは難しくなってきますので気温が高い分には問題ありません。氷が溶けたり割れたりしないかが心配でした。

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 2015年に参加した北極マラソンでは沸騰した水をボトルに入れてスタートしたものの、30分としないうちに凍結。飲めなくなりました。前回の反省を改善し今回僕がボトルに入れた常温の水は氷点下でも凍りません。サイエンス!
 
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ロードでもトレイルでもない、氷の下は水。陸地ではなく湖の上を走っていると思うと不思議な気分がします。コンディションは毎年変わり、それに伴いゴールタイムも変わります。アイススケートリンクのようにツルツルの氷上を走るのだと想像していましたが、実際は氷上に雪が乗っており一歩足を置くたびシューズが前後に数cm滑るようなコンディション。これがランニング効率を低下させランナーの足を早々と疲れさせました。
 
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●氷上マラソンのここが過酷1
 
両足に0.5kgの重りをつけて海辺の砂浜を走るような運動。凸凹を避けるため膝が自然と上がるので道路を走るよりもずっとキツい。ぼーっとして自分が氷の上を走っていることを忘れていると滑ります。
 
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●氷上マラソンのここが過酷2

スピード感が掴めない。ランナーは周囲の景色が流れることによって自分がどのぐらいのスピードで走っているのかを感じますが360℃見渡す限り建物のない白銀の世界では景色が流れないため、スピード感がまったく感じられない。そのため速すぎたり遅ぎたりペースが乱れやすくなります。そんな時は心拍数計だけが頼りです。
 
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●氷上マラソンのここが過酷3

河川敷よりも風景が変わらない。建物一つない河川敷をただひたすらまっすぐ走るイメージ。「直線だったら時間は短く感じられますよね?」といった声もありますが、風景が変わらないので前に進んでいる感じがしません。行けども行けども同じ景色が広がります。面積は3万1500㎢、湖長約600km、最大幅80km。2千年前、地球上の淡水の総量の22%を占める湖の上を走っていると思うと壮大な眺めが楽しめます。走ることに集中できるので簡単に悦に入ることができます。
 
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落とし穴に注意!障害物が好きな僕にはうってつけでした。いっそのこと走り方が悪ければ沈むぐらいがちょうどよかったのに。
 
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●氷上マラソンのここが過酷4

一番大変なのはトイレでしょう。バイカル湖は世界遺産で“クリーンウォーター”がテーマの自然保護のチャリティマラソンに参加しているのですから「そこらで済ませる」というわけにはいかず。仮にトイレをしようにも、あたり一面物陰は一切なし。道は直線なので遠くからでもよく見え、お尻丸見えです。女性の方は、羞恥心との戦いになります。
 
ロシア語でトイレは「トゥアリュート」。「バスルーム!トイレット!」といくら叫んだところで通じません。外国のレースでは日本で日ごろよく使う単語ぐらいは勉強しておかないと自分が困ることになります。
 
僕のレースは15kmから冷えでお腹が痛くなりその後は「我慢、我慢」の展開で、水やエネルギーも身体に吸収されずビルドダウン。タイムは「今日は気温が寒かったんだよ」「体調が悪かったんだよ」と説明してくれたりはしない。タイムはタイムしか語らない。必死に走るも力が入らない。ふらふらになりながら歩かずに完走。情けない。あらかじめ5度もトイレを済ませ胃の調子を整えてきたのにこの腹冷えの弱さはどうしたものか。
 
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フィニッシュ後はタイムや順位は知らされず「頑張ったね〜」で終わり。僕の前には何十人というランナーがいた、その事実を僕が知っているだけで十分だった。男子優勝はポーランド人でタイムは2時間50分の大会新記録。「ロードのフルマラソンの自己ベストは?」と尋ねたら2時間12分。一般市民ランナーにして速すぎる。ロード以外の道を走ったのは今日が初めてだという。やっぱりマラソンでは走ることに惜しみない時間と努力を注ぎこんだものが栄光を手にする。

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レース当日の夜は表彰式兼ガラディナーパーティー。1人1人名前を呼ばれ、みんなの前で表彰されます。順位発表は特になく「完走者全員を平等に讃える」という考えらしい。素晴らしい考えだと思いましたが少人数の大会だからできることで、それでも1人1人名前を呼ぶためめちゃめちゃ時間がかかり飲み会は深夜まで延々と続きました。。

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アルコール解禁!みんなでウォッカをストレートで10本以上は空けたかな。翌朝フロントには「昨夜レストランで携帯電話を失くしたんだけど…」と駆け込むランナーが大勢いました(笑)
 
「寒いけれど温かい」そんなマラソン大会でした。
 

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